群馬ヤクルト販売株式会社人材開発部 部長 竹垣咲紀× 県立女子大学長 小林良江

群馬ヤクルト販売株式会社人材開発部 部長 竹垣咲紀         × 県立女子大学長 小林良江                                           

本学学長の小林良江が、卒業生、学内外の方々と対談を通して、「県女」の未来や可能性について語り合います。スペシャルトーク第3回目のゲストは、群馬ヤクルト販売株式会社人材開発部部長の竹垣咲紀さん(文学部美学美術史学科 2000年度入学)です。2021年12月3日、竹垣さんを学長室にお迎えし、学生時代の思い出や仕事への取り組み方、「県女」に届けたいメッセージを伺いました。

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 (令和3年12月3日(金)対談)

ゼミやアルバイトに励んだ大学時代

学長:学生時代を振り返り、思い出に残っていることはありますか?

竹垣:玉村町で初めての一人暮らしです。

学長:最初は心細かったかもしれませんね。大学での学びではいかがですか?例えば、ゼミナールには入っていましたか?

竹垣:塚本先生の服飾美学のゼミに入っていました。個性的で面白い友達が多く、楽しかったです。少人数のゼミでしたが、厳しかったですね。前日の夜からドキドキして眠れないこともあり、授業が終わるとホッとしました(苦笑)。

西洋美術史を学びたくて県女に入ったのですが、1年の必修で塚本先生の授業がとても面白かったので、先生のゼミを選びました。厳しい指導の中、様々な気付きがあり、成長できたゼミでした。

学長:では、学生時代は充実していましたね。

竹垣:充実していました。1年の時に受けた北野先生の演劇の授業は、月に1度、学生たちで東京に行き、演劇を選び鑑賞し、レポートを書きました。意味の分からない演劇も観ましたが、理解できない価値観を知ることが面白かったです。また、京都での実地旅行も楽しかったですね。

学長:学びの面でたいへん充実した4年間だったのですね。

竹垣:勉強したかった美術や歴史を深く学ぶことができました。また、貴重なものを見せてもらったことが良かったです。

学長:サークル活動など他のことはなさっていましたか?

竹垣:授業以外はアルバイトをしていました。1年次に大学の掲示板で見つけたタクシー会社のアルバイトを、卒業まで4年間続けました。

仕事内容は、電話を受けることと配車でした。おじさん達に囲まれて、大学とは全く違う環境でした。電話応対は緊張しましたが、社会人になる前に慣れることができたので、良かったです。

学長:なんと4年間、同じアルバイトを続けたのですね。

竹垣:他にもコンビニのアルバイトもしていました。こちらのアルバイト先には同世代の仲間がいて楽しかったですし、お客様とのやりとりもアルバイトに行く楽しみでした。

学長: B to C(対お客様への仕事)が合っていらっしゃったのですね。

就活を乗り越え、入りたい企業に出会えた

学長:就職を考え始めたのは3年生くらいからでしたか?

竹垣:周りが就職活動の話を始めて、やっと焦った感じでした。4年生になる直前にスーツやバッグ、靴を買い揃えました。山形県出身なので、地元で就職できたらと思っていましたが、就職氷河期だったため、希望する会社の募集が全然ありませんでした。東京の企業や県内企業もなかなか内定を取れませんでした。しかし群馬ヤクルトは、選考時期が5月と遅く、その時、初めて本当に入りたい会社に会えたと思いました。

学長:多くの企業をトライした結果、本当に行きたい会社に出会ったということですね。入社の決め手はありましたか?

竹垣:2つありました。まずは雰囲気、学生に対しても丁寧に接する会社だと感じました。もう一つは、会社の考え方に共感できたところです。

学長:竹垣さんは県外からいらして、群馬の企業に就職し、生活の基盤を県内に構築されましたね。県外からの学生は地元に帰ろうと考える人が多い中、なぜ群馬で生活の基盤を築こうと思われたのですか?

竹垣:群馬は気候、治安、自然にも恵まれて、災害も少ないですよね。東北へのアクセスも良く山形に帰りやすい、東京にも近く、良い環境だと思います。群馬に住んで良かったと実感しています。

学長:私も県外から来ましたが、群馬県は住みやすいことを実感しています。入社当初はどのような仕事をしていましたか?

竹垣:直販サービス部で宅配以外の販売経路(スーパー、コンビニ、学校等)のスーパーの販売担当をしていました。群馬ヤクルトは女性が多いのですが、直販の部署においては男性が多く、紅一点でした。また、営業先では、競合他社もみな男性で、商談待ちの間も女性は私一人でした。

学長:B to Bでもお客様への対応ができると上司がお考えになったのですね。現在はどのような仕事をしていますか?

竹垣:人材開発部で社員の採用や研修、人事制度の設計をしています。

学長:直販から人材開発部、そして部長に昇格されたのですね。仕事で気をつけていることはありますか?

竹垣:部署のメンバーは、みな仕事が好きで前向きなので、私が働きかけなくても自ら動いてくれます。私に出来るのは、話を聞き、本当に困った時にアドバイスすることや、羽ばたける場を設定しスポットライトを当てるようにすることです。

学長:部下が活躍できる場所を見つけるのは大変なことだと思います。竹垣さんが普段からメンバーのことを気に掛けているからこそですね。

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悩むより「やるしかない」という気持ちで管理職に

学長:部長に就任される前、管理職は経験していましたか?

竹垣:課長から次長、そして部長へと、段階を踏んで経験していきました。

学長:管理職になる時に悩みませんでしたか?

竹垣:悩みました。しかし、部署では私が一番長く経験を積んでいたので、やるしかないと思いました。また、上に立とうと言うより、皆が伸び伸び働けるようにすれば、それほど気負わなくてもいいと思いました。

学長:それはいつ頃でしたか?

竹垣:2016年、35歳でした。

学長:キャリアとしても、ひと通りのことは分かるという時期ですね。課長や次長とは違う、荷の重さを感じることはありましたか?

竹垣:ありました。部門のトップとして、部門長同士の会議があるのですが、経営会議の下という位置づけなので、その会議に参加した時、改めて会社全体のことを考えるチームに入ったと実感しました。私にできるかなと思いつつ、先輩達に囲まれながら大丈夫だろうと思いました。

学長:女性の部門長は他にいらっしゃいましたか?

竹垣:財務部長が1人いました。

学長:では、社内が男性社会だと思うことはありますか?

竹垣:社内全体でみると女性が多いのですが、総合職は男性が多いです。管理職においては圧倒的に男性社会です。会社として女性の活躍を支援しているので、女性の割合も徐々に増えていくと思います。

伝えるより「聞くこと」で信頼関係を作る

学長:仕事に対する姿勢、心がけていることや大切にしていることは何ですか?

竹垣:とにかく話を聞くことを大切にしています。伝えようとするより、相手の話を聴く。これは社内でも言われ続けており、傾聴についての社内研修もあります。

また、月に1回、上司と部下が対話をするミーティングを実施しているのですが、その時は上司が聞き役で、部下が9割話すことを目指しています。どうしたら部下が話をしてくれるか、雰囲気作りから始め、適切な質問をします。

聞き役に徹せない上司やこの時間を無駄と感じている人もいます。自分がしてもらっていないと、良さは分からないのかもしれません。

さらに、男女で対話に対しての考え方が違います。女性は話を聞いてもらえると嬉しいけれど、男性は意味があるか疑問に思う人が多い気がします。女性は、聞いてもらうことで悩みを解消し、自ら問題を解決していく傾向があるので、そのような特徴に理解を促す研修や勉強会を実施しています。

学長:会社全体で傾聴を重要視していらっしゃるのですね。

竹垣:群馬ヤクルトがヤクルト商品の普及率全国1位になったことを辿ると、お客様の話をしっかり聴くことに重きを置いたのがポイントになっていると思います。お客様の話をしっかり聴いた上でコミュニケーションを取ると、信頼関係ができる。すると、お客様も商品の価値を聞いてくださる。この姿勢を会社全体で徹底して行った結果、実績がついてきたと思います。

学長:全国1位とは素晴らしいですね。普及率一位を支えるヤクルトスタッフの皆さんへの支援、たとえば正社員への取り組み等はありますか?

竹垣:ヤクルトスタッフは、女性ばかりですが、同じ仕事をしながら雇用形態が社員という人も増えています。ちなみに、センターを束ねるマネージャー(店長)は、約半数がヤクルトスタッフ出身です。更にその上のリーダーは、総合職の社員と肩を並べて仕事することを目指して頑張っていらっしゃいます。

学長:以前、群馬ヤクルトさんでインタビューをさせていただいた時、ヤクルトスタッフから役員になられた方がいらっしゃいました。その時から、誰にでもキャリアの門が開かれている企業、女性の活躍を応援している企業というイメージを持っていました。本田会長にお会いした時に、頑張っている本学卒業生がいらっしゃると竹垣さんのお名前をお聞きし、今日いらしていただきました。周りの方も、竹垣さんの仕事ぶりを評価していらっしゃると感じました。

竹垣:新卒から長く勤めていると、周りの方から「いい会社だね」と言われます。ただ、自分に力があって残っているのではなく、人に恵まれたから頑張れたのだと思います。

学長:卒業生が他に2人いらっしゃると聞いています。後に続いてくださるといいですね。

竹垣:入社4年目と5年目の2人ですね。結婚、出産後も活躍しています。

学長:では、ライフイベントに合わせやすい職場環境なのですね。

竹垣:そうですね。これからも続けて欲しいと思っています。

学長:お仕事の面で、コロナの影響はありましたか?

竹垣:「コロナで来ないで欲しい」というお客様は、殆どいらっしゃいませんでした。むしろ、「こんな時期だからしっかり飲まないと」と言っていただくことがありました。コロナ対策でお客様と対話の時間は減ってしまいましたが、普段からヤクルトの価値が伝わっていたから、このように言っていただけたと感じています。

学長:では、仕事の今後の抱負はありますか?

竹垣:群馬ヤクルトが、実績では全国101社の中で5期連続15年1位です。実績だけでなく、社員のやりがいを高め、自社を自慢の会社と思えるように努力していきたいと思っています。

学長:ご結婚なさっていると伺いましたが、結婚前と結婚後で、働き方は変わりましたか?

竹垣:夫が色々してくれるので、正直あまり変わっていません。

美学で培った「固定観念を崩す思考法」

学長:会社の仕事の中で、大学での学びが活かされていると思うことはありますか?

竹垣:大学で学んだことが、社会に出て活かされることはないと思っていましたが、全くそんなことはありませんでした。

美学は、対象の根本原理を深く追究するので、常識にとらわれない多様な見方や色々な可能性など、多角的な考え方を徹底的に学びました。大学で身につけた自分の固定観念を崩す思考法が、社会人になっても活かされていると感じています。

学長:答えのない"美"とは何かを考えることで、論理力・思考力・分析力が養われたのですね。

竹垣:美学概論など難しい授業もありました。ありきたりな答えでないことに鍛えられましたね。例えば、人を見る時に一辺倒ではなく色々な見方をしたり、課題に対して色々な可能性を考えたり。アイデアを出すことも苦でなくなりました。

学長:学んだことが役に立っていますね。美学の卒業生は、社会に出て活躍している方が多いですね。

竹垣:先程も申し上げましたが、個性豊かな友達や先生が多く、刺激的で色々な価値観があったのが良かったと思います。突飛で縛られていない方が多く、私も「これでいいんだ」と思えました。

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大学の外で社会とのつながりを

学長:最後に、学生へのメッセージをお願いします。

竹垣:大学で勉強できることは、本当に貴重だと卒業して分かりました。過去の自分にも言っている感じですが、勉強を頑張って欲しいと思います。真剣に取り組むと残ります。もう一つ、社会人に沢山触れ合えると良いと思います。学生時代は、先生、親、アルバイト先だけで、どうしても世界が狭くなってしまうので、色々な人に出会えるように心がけると良いのではないでしょうか。

学長:地域貢献や社会貢献を通じて、社会人と触れ合えるといいですね。大学への要望はありますか?

竹垣:社会人との接点を1年生から設けていただけると良いと思います。

学長:仰る通り、大学の外で社会人と触れ合いながら学ぶことも大切ですね。大学の授業で社会人を呼んで話を聞く機会は増えていますが、選択科目なので履修する人は限られています。学生が聞くだけでなく、相互にコミュニケーションが取れるように発展していけるといいですね。

竹垣:群馬の良さ、群馬に住んで社会人になる良さも、学生に伝えてもらいたいです。

プロフィール

群馬ヤクルト販売株式会社人材開発部 部長 竹垣咲紀 (文学部美学美術史学科 2000年度入学)

県立女子大文学部美学美術史学科卒業後、群馬ヤクルト販売株式会社に入社。入社当初は直販サービス部に所属。2016年より人材開発部長に就任し、社員の採用や研修、人事制度の設計を行っている。

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